海岸・渚・海辺の環境保全に関わる西隆一郎研究室の紹介 -海を守る、人を護る、自然環境を次世代に残す研究-
Coastal Engineering and Science - Protect Seashore, Preserve the Nature, Assist Safe Utilization (Prof. Dr. Ryuichiro Nishi )

研究室OB

kamo.jpg加茂 崇  博士(学術)(Takashi Kamo,Ph.D.)
k4566889 アット kadai.jp

勤務先:(株)アルファ水工コンサルタンツ

鹿児島大学大学院連合農学研究科修了(博士課程)
鹿児島大学水産学部海岸環境工学研究室

 

<博士論文>

砂質性海浜における地下水の栄養塩供給機構

<研究紹介> 

①砂質性海岸に流入する淡水量の推定―鹿児島県吹上浜を例に―

 陸域から沿岸域への栄養塩供給機構を考察するために,鹿児島県の吹上浜流域における淡水量を水収支式によってマクロ的に推定してみた.その結果,流域平均雨量は概ね2,200 mmと全国平年値1,683 mmより多く,流域の平均値として,降水量に対して河川流量が29.7 %,地下水量が36.6~37.8 %,流出量に対して河川流量が44 %,地下水量が55.3~56 %を占めていることがわかった.降水量の多さと,シラスで代表される火砕流台地という地質的条件等によって,地下水量が多く存在することが推定される.すなわち,吹上浜流域一帯では栄養塩供給機構として地下水流量が重要であることが示された.今後は栄養塩供給量を算定し,栄養塩供給機構としての地下水流入が沿岸域生態系に及ぼす影響について考察する必要がある.

 


②海岸湧出地下水の研究―鹿児島県松ヶ浦海岸潮間帯から湧出する地下水―
 海岸湧出地下水の特徴を明らかにする目的で,鹿児島県の松ヶ浦海岸潮間帯で水質観測および流量測定を行った.潮間帯から12.6 m3/dayの海岸湧出地下水量が確認され,栄養塩供給量として,NO3-N,PO4-P,各々45.7g-N/day,0.5 g-P/dayと推定された.松ヶ浦海岸背後地の地下水流出が発生しやすい地質条件と,窒素負荷量が大きい茶畑という土地利用条件によって,高濃度のNO3-N(300 μmol/L)と低pH(6.3)を含んだ地下水が海岸に湧出していると考えられた.さらに,海岸湧出地下水の塩分は0.1~2.9 ‰と淡水地下水量が90 %以上を占めており,海水の影響は小さいことがわかった.河川流入のない松ヶ浦海岸にとって,海岸湧出地下水が沿岸域生態系にとっての重要な栄養塩供給機構である可能性が示唆された.

<研究実績>

  • 鶴成 悦久・西 隆一郎・加茂 崇: 水圏環境GIS を用いた重富干潟における環境特性の解析, 地理情報システム学会講演論文集(CD-ROM) ,巻21 ,2012年.
  • 冨岡森理・須田有輔,加茂 崇・大富 潤・西 隆一郎・田中 龍児・早川 康博: 鹿児島県吹上浜の砂浜海岸の潮間帯に出現した多毛類,水産大学校研究報告,第61巻,第2号,pp.65-74,2012.
  • 鶴成 悦久・西 隆一郎・加茂 崇・立山 芳輝・浜本 麦・林 健太郎: GPS魚群探知機による極浅海域を対象とした調査手法に関する研究,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_1132-I_1137,2013.
  • 加茂 崇・西 隆一郎・鶴成悦久・須田有輔・早川康博・大富 潤: 砂質性海浜に流入する淡水量の推定-鹿児島県吹上浜を例に-,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_545-I_550,2013.
  • 加茂 崇・西 隆一郎・鶴成悦久・黒瀬久美子: 海岸湧出地下水の研究-鹿児島県松ヶ浦海岸潮間帯から湧出する地下水-,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_545-I_550,2013.

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鶴成 悦久  博士(学術) (YOSHIHISA Tsurunari,Ph.D.)
k8596349 アット kadai.jp

勤務先:大分大学准教授
研究テーマ:沿岸生態系を取巻く環境モニタリング手法
出身地:大分県杵築市山香町
鹿児島大学大学院連合農学研究科修了(博士課程)
鹿児島大学水産学部海岸環境工学研究室

<修士論文>
極浅海域を対象とした環境調査手法の開発と水圏GISの応用

<博士論文>
沿岸生態系を取巻く環境モニタリング手法
Environmental monitoring on the nearshore area ecosystem
Abstract;
 Terrestrial nutrients are transported into a nearshore zone to maintain a local ecosystem. Thus, development and application of an engineering method that can estimate quantity of nutrients supply to nearshore zone is necessary for a proper coastal management. In addition, nearshore current and sediment character which also affect a local ecosystem might be controlled by topography; however accurate sounding system is expensive and rarely applied to biological and ecological research. Therefore, new inexpensive but reasonably accurate method has been developed. 
 This study focused on a tidal flat, which is one of the major coastal environments, to apply the engineering techniques to estimate the terrestrial nutrients supply by a river discharge and groundwater discharge, and to monitor a nearshore topography and sediment characteristics. Then, aquatic GIS are applied to make the research results open to the public. 
 In Chapter2,An inexpensive GPS fish finder which is built with side scan sonar function is applied to measure near-shore zone topography. To estimate a survey error by the GPS fish finder, a survey using a total station has been conducted to achieve qualified highly accurate topography data set. The survey data using a total station and GPS fish finder are compared. Then, it is found that an survey data accuracy using GPS fish finder is as much as 1.2 to 1.6 times of the error that is accepted by the legal survey criteria, therefore this survey techniques using GPS fish finder cannot apply to a legal survey, however this survey technique can apply to an environmental study that require reasonably accurate topography such as for an ecosystem study.
 In Chapter3,local benthic ecosystem would be affected by the change in sediment size and composition, as well as nearshore topography including a river mouth. Therefore, these key factors have been examined. Sub-aerial topography and sediment characteristic had been surveyed for four years since 2009 to 2012 in this research. In addition, time history of river discharge and significant wave characteristics which affect sediment transport and topography change are estimated.
 In Chapter4,Previous field study on nearshore nutrients supply by Kamo shows that groundwater discharge around a shoreline is one of the major nutrients transport mechanism into the tidal flat, as well as the discharge from Omoi river. Therefore, further research on nutrient supply and fresh water discharge from hinter land region into the Shigetomi tidal flat has been conducted. A Water Budget Method is applied to estimate the freshwater discharge rate and volume in the Omoi river basin. Precipitation of the river basin was estimated to be 17.556 ×10^7m^3/year from which the volume of river discharge was 8.697×10^7m^3/year (50%), the quantity of ground water was estimated as much as 6.771×10^7m^3/year (39%), and the quantity of evaporation was 2.088×10^7m^3/year (11%), respectively Concentration of PO4-P in the ground water was nearly the same as that in the river water.
 Finally, it is emphasized that the developed techniques to estimate the terrestrial nutrients supply is unique concept and technical tool which can apply to most of coastal environment.

 

<研究紹介>

 浅海域である干潟は高い生物生産性を有し,陸域から流入する有機物質を吸収・固定する重要な役割を果たしている.さらに海洋生物および水産有用種の幼稚仔保育機能を有する海域であり,水産資源の保護・増殖の他,海洋生物多様性保全へ寄与される.したがって,定期的にモニタリングを行い,その結果に基づいて,適切な管理を行うことが望ましい.そこで干潟浅海域の生態系を取巻く環境の変化を定量的に把握するために,新たな環境モニタリング手法を開発・応用し,干潟環境の調査と解析,および結果の可視化に関する研究を行っている.

<研究実績>

  • 山崎利夫・鶴成悦久・平瑞樹・吉松一成・小川領一:フリーのGISソフトを利用したマップ作り講習会の試み,地理情報システム学会講演論文集Vol.14,pp.152-155, 2005.
  • 鶴成悦久・山﨑利夫・小川領一・平瑞樹:電子国土Webシステムによる地域安全マップの活用の試み―小学生による通学区域内の危険箇所調査をもとに―,地理情報システム学会講演論文集,Vol.17, pp.567-570. 2008.
  • 山﨑利夫・鶴成悦久・村上幸司 ・次石健太:過疎化・高齢化の著しい集落の人口動態及び生活実態に関する研究,地理情報システム学会講演論文集,Vol.18,pp.349-352, 2009.
  • 鶴成悦久・山﨑利夫・市園誠一郎・庄村幸輝:AED 電子マップの効果的活用法に関する研究, 地理情報システ学会講演論文集(CD-ROM) ,Vol.19ROMBUNNO.3A-1,2010.
  • 西 隆一郎・Julianti Manu・Tommy Jansen・林健太郎・鶴成悦久:津波による第Ⅰ砂丘部および海岸保全構造物背後の洗堀地形について, 海洋開発論文集,第28巻,2012.
  • 鶴成悦久・西 隆一郎・加茂 崇:水圏環境GIS を用いた重富干潟における環境特性の解析, 地理情報システム学会講演論文集(CD-ROM) ,Vol.20ROMBUNNO.C-6-4,2012.
  • 山﨑利夫・竹下俊一・前田博子・隅野美砂輝・鶴成悦久:スポーツ地理情報デジタルアーカイブの構築,スポーツ産業学研究,Vol.23,No.2,pp.213~226,2013.
  • 鶴成悦久・西 隆一郎・加茂 崇・立山 芳輝・浜本 麦・林 健太郎:GPS魚群探知機による極浅海域を対象とした調査手法に関する研究,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_1132-I_1137,2013.
  • 加茂 崇・西 隆一郎・鶴成悦久・須田有輔・早川康博・大富 潤:砂質性海浜に流入する淡水量の推定-鹿児島県吹上浜を例に-,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_545-I_550,2013.
  • 加茂 崇・西 隆一郎・鶴成悦久・黒瀬久美子:海岸湧出地下水の研究-鹿児島県松ヶ浦海岸潮間帯から湧出する地下水-,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.69,No 2,I_539-I_544,2013.
  • 鶴成悦久・西隆一郎・浜本麦・濵﨑浩徳・池田克彦・加茂崇・渡辺卓也:鹿児島湾奥部に位置する重富干潟の地形特性,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.70,No 2,I_I_1122-I_1127,2014.
  • 加茂崇・鈴木信・和田敏裕・岩崎高資・渡辺卓也・西隆一郎・鶴成悦久:福島県松川浦における淡水流入量の推定および浦口周辺の水圏環境調査,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.70,No 2,I_1020-I_1025,2014.
  • 西 隆一郎・鶴成悦久・細谷一範・Mario de Leon・松元 勇・佐々木秀勝:リ-フ沖合海域海砂採取がリ-フ内海浜に与える影響評価-喜念浜の事例解析,土木学会論文集B3(海洋開発), Vol.71,No.2,I_772-I_777,2015.
  • 鶴成悦久・西 隆一郎・加茂 崇・渡辺卓也・間世田未来・浜本 麦・峯 俊介・石川和雄:重富干潟における栄養塩供給と淡水流入量の推定,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.71,No.2,I_857-I_8552015.
  • 西 隆一郎・(故)日高正康・鶴成悦久・松元 勇・小湊信一・村上啓介:大根占海域における海砂採取の周辺環境への影響評価調査,土木学会論文集 B2(海岸工学),Vol. 71 (2015) No. 2 p. I_745-I_750,2015.
  • K. Hosotani, R. Nishi, and Y. Tsurunari, Simple Underwater Monitoring of Shallow Water Using a Spherical Camera Mounted on a Radio-controlled Boat, the 2016 IEEE Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO 2016), December 3-7, 2016, Shangri-La Hotel, Qingdao, China.


<著書(共著)>

  • 山崎利夫,鶴成悦久,松田欣也,平瑞樹,鈴木雄清(共著):カシミール3DとGPS・GISを使ったオリジナルマップ作成講座,鶴成は第1章・第2章・第4章.第5章を執筆,古今書院,2006年8月.

<Webサイト>

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渡辺 卓也 修士(水産)(Takuya Watanabe)
k2981861 アット kadai.jp

勤務先:いであ(株)
鹿児島大学大学院水産学研究科水産生物・海洋学分野(修士課程)
出身地:東京

<修士論文>

福島県松川浦のアマモ場環境評価
Environmental assessment on eelgrass (Zostera marina) bets in Matsukawaura inlet, Fukushima.

(要約)

 福島県松川浦は福島県北部に位置する潟湖である.2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波により砂州の決壊やアマモ場の消失などが生じ水圏環境に変化が生じた.その後,砂州は復旧され一部でアマモ場の再生も確認された.生物多様性の維持や漁場として持続的に利用し管理するためにも,津波後の水圏環境の変化を把握し,幼稚魚の保育機能を持つアマモ場の分布状況を評価することは重要である.本論文では,過去の航空画像から津波前後のアマモ場の分布状況の推定を行うとともに,UAVを利用した現地調査により湾口のアマモ場の分布特性を把握した.加えて,水質や底質などの物理環境のモニタリング結果から総合的な環境評価を行った.
 本研究によって得られた主な結果を以下に示す.

  1. 小型UAVを利用し写真測量として利用できるか総合標定と単写真の比較から検討を行った.その結果,高度140mから空撮を行うことにより1/5000レベルの地図に使用ができることが判明した.総合標定からの精度検証では水平誤差が標準偏差0.93mとなり,写真測量として利用可能であった.また,単写真ではレンズの歪みの補正を行った画像では縦横3222ピクセル内の208m×208mが利用可能となった.

  2. 1952年~2015年の航空写真を利用し,GISでアマモ場の画像分類を行った.また, 2015年8月25日・26日と2015年11月11日・12日に湾口の空撮を行い,同様に画像分類を行った.その結果,アマモ場は1952年には水域面積に対して20.6%分布していたが,津波前までに2.0%まで減少していた.2009年には湾全体でノリの養殖がされており,ノリ棚形成時に藻狩りを行うことによって管理がされていたと推測された.2011年の津波後には0.1%まで減少したが,湾口から水路を通じて砂州側から分布を拡大し2015年には4.1%まで増加していた.8月と11月の現地調査では,顕著な季節変化は確認できなかったが一部で分布がさらに拡大しており,11月には西部に通じる水路内に分布を拡大していることが把握できた.

  3. 水圏環境のモニタリングでは,(i)水質と流況の連続観測,(ii)湾内の水質・底質の分布特性,(iii)淡水流入量の算出の3つの調査・解析を行い,アマモの生育条件から評価をした.その結果,湾口から湾中央がアマモの生育条件に適しており,西部や南部では底質等が生育に適していないことが明らかになった.流向は上げ潮時には南東の砂州に流入する流れが優先していた.淡水流入量では2009年から2014年の6年間の平均で河川水27%,地下水56%,蒸発散量17%となり,松川浦では栄養塩供給機構として地下水も重要であることが明らかになった.

    以上の結果から,松川浦では湾口から湾中央までアマモの生育に適しており,今後も分布を拡大し高密度に分布する可能性があることが明らかになった.

<研究実績>

  • 鶴成悦久・西隆一郎・浜本麦・濵﨑浩徳・池田克彦・加茂崇・渡辺卓也:鹿児島湾奥部に位置する重富干潟の地形特性,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.70,No 2,I_I_1122-I_1127,2014.
  • 加茂崇・鈴木信・和田敏裕・岩崎高資・渡辺卓也・西隆一郎・鶴成悦久:福島県松川浦における淡水流入量の推定および浦口周辺の水圏環境調査,土木学会論文集B3(海洋開発),VoL.70,No 2,I_1020-I_1025,2014.
  • 鶴成悦久・西 隆一郎・加茂 崇・渡辺卓也・間世田未来・浜本 麦・峯 俊介・石川和雄:重 富干潟における栄養塩供給と淡水流入量の推定,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.71,No.2,I_857-I_8552015.

 

maseda.jpg間世田 未来 修士(水産) (Miku Maseda)

勤務先:(株)三洋コンサルタント
鹿児島大学大学院水産学研究科水産生物・海洋学分野(修士課程)
出身地:鹿児島県

 

<修士論文>
メヒルギ群落の生育環境特性 
 


<研究紹介>

 マングローブは、熱帯・亜熱帯の汽水域に生育し、気根と呼ばれる地上根により大気から酸素を取り込み、胎生種子の着底により繁栄する特殊な生態をもつ樹木です。また、落葉、落枝、枯死した幹や根、ベントスの死骸などの有機物によるデトリタス食物連鎖の形成や、水の浄化機能、防災機能といった独特の働きがあります。そのマングローブ群落の北限が、一般的に鹿児島県喜入入見町にあるメヒルギ林と言われており、国の特別天然記念物に指定されています。しかし、喜入の海岸は以前と比べ埋め立てや消波ブロックなどの人工構造物によって砂が堆積しやすくなっており、現在はマングローブ林まで海水が届かない状況にあります。そのため、常に地下水を放水していますが、本来の最適な生育環境とは異なり、メヒルギの生育状況は悪化しています。喜入町のマングローブ林を守るには、海岸の後ろにある群落まで海水が一定量来るようにし、汽水域の環境に戻すことが重要です。

 私は、このマングローブ林の保護に関わりたいと思い、卒業研究としました。具体的には、喜入海岸の地下構造を把握し、地下潮汐や降雨、太陽放射など、周りの環境変動とメヒルギ林までくる水の塩分との関係を明らかにすることを目標に研究に取り組んでいます。

<研究実績>

  • 鶴成悦久・西 隆一郎・加茂 崇・渡辺卓也・間世田未来・浜本 麦・峯 俊介・石川和雄:重 富干潟における栄養塩供給と淡水流入量の推定,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.71,No.2,I_857-I_8552015.
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